特定電子メール法〜その2

三 オプトアウト(3条3項)
特定電子メールの送信をしないよう通知を受けたときは、特定電子メールを送信してはならない。

1 通知の方法特定
電子メールの送信をしないように求める電子メールアドレスを明らかにして、電子メールの送信その他の任意の方法によって行う(施行規則5条)。

2 例外 電子メールの受信をする者の意思に基づいて広告又は宣伝以外を主な目的として送信される電子メールに広告又は宣伝が付随的に行われる場合(3条3項但書、施行規則6条)
A  契約の申込みをした者又は契約を締結した者に対し当該契約の申込み、内容又は履行に関する事項を通知するために送信される電子メールにおいて広告又は宣伝が付随的に行われる場合
B 電子メールの受信をする者に対し広告又は宣伝が行われることを条件として提供される電子メール通信役務を用いて電子メールが送信される場合であって、その電子メールにおいて当該電子メール通信役務の提供をする者により広告又は宣伝が付随的に行われる場合 (例えば、宣伝広告がなされることが前提のフリーメール)
C 前二号に掲げる場合のほか、広告又は宣伝以外の行為を主たる目的として送信される電子メール(電子メールの受信をする者の意思に反することなく送信されるものに限る。)において広告又は宣伝が付随的に行われる場合


四 表示義務(4条)
1 特定電子メールの送信にあたって表示されるようにしないければならない事項
A  当該送信者(当該電子メールの送信につき送信委託者がいる場合は、当該送信者又は当該送信委託者のうち当該送信に責任を有する者)の氏名又は名称
表示場所:受信者が容易に当該事項を認識することのできる場所

B  前条第三項本文の通知を受けるための電子メールアドレス又は電気通信設備を識別するための文字、番号、記号その他の符号であって総務省令・内閣府令で定めるもの (3条3項但書、施行規則6条で定める場合を除く。)
表示場所:受信者が容易に当該事項を認識することのできる場所

2 総務省令・内閣府令(施行規則8条)
A 特定電気通信設備のうち法第3条第3項本文の通知を受けるための用に供する部分(当該通知をするために必要な情報の明確かつ平易な表現による提供その他の方法により特定電子メールの受信をする者が当該通知を容易に行うことを可能とするために必要な電磁的記録を保存したものを含むものに限る。「通知受領部分」)をインターネットにおいて識別するための文字、番号、記号その他の符号
 要するにURL
B 前号に規定する符号に対応させた文字、番号、記号その他の符号であって、特定電子メールの受信をする者が当該符号を用いてその使用する通信端末機器により通知受領部分に接続できるもの
 要するにリンク


(*)不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)の用に供される電気通信設備

一般には、受信拒否の連絡先となる電子メールアドレス又はURL

3  その他総務省令・内閣府令で定める事項(施行規則9条)
なお、施行規則6条各号のいずれかに掲げる場合における特定電子メールの送信をする場合(オプトアウトの例外)は除く。
A 施行規則5条に定める方法により、特定電子メールの送信をしないように求める旨の通知を、4条第2号に掲げる電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信をすることにより又は施行規則8条に定める文字、番号、記号その他の符号を用いることにより行うことができる旨
 ようするにオプトアウトが出来る旨の記載
表示場所:第4条第2号に掲げる電子メールアドレス、URL等の表示がされた場所の直前又は直後(受信者が当該特定電子メールの送信に用いられた電子メールアドレスに返信することでオプトアウトの通知を行うことができる場合には、当該特定電子メールの任意の場所であって、受信者が容易に当該事項を認識することのできる場所)
B 当該送信者(当該電子メールの送信につき送信委託者がいる場合は、当該送信者又は当該送信委託者のうち当該送信に責任を有する者)の住所
表示場所:任意の場所(特定電子メール以外の場所に表示するときは、その場所を示す情報を当該特定電子メールの任意の場所に表示する。)
C 特定電子メールの送信についての苦情、問合せ等を受け付けることのできる電話番号、電子メールアドレス又はURL
表示場所:任意の場所(特定電子メール以外の場所に表示するときは、その場所を示す情報を当該特定電子メールの任意の場所に表示する。)

4 表示の方法
受信者の通信端末機器の映像面に正しく表示する。


五 送信者情報を偽った送信の禁止(5条)
送信者は、当該電子メールの送信に用いた電子メールアドレス又はURL等を偽って特定電子メールの送信をしてはならない。
罰則:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金


六 架空電子メールアドレスによる送信の禁止(6条)
送信者は、自己又は他人の営業のために多数の電子メールの送信をする目的で、架空電子メールアドレスをあて先とする電子メールの送信をしてはならない。
 要するに、出会い系メールのように、ランダムにスパムメールを無差別に大勢に送りつけるようなことはしてはいけないということ。


七 総務大臣及び内閣総理大臣による措置命令(7条)
1 措置命令の対象
A 特定電子メールの送信の制限(3条)を遵守していない
B  表示義務(4条)を遵守していない
C  送信者情報を偽った電子メールを送信
D  架空電子メールアドレス宛の送信

2 措置命令の要件
 電子メールの受送信上の支障を防止するため必要がある場合

3 罰則
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
ただし、第3条第2項の規定による記録の保存に係るものは、100万円以下の罰金。


八 総務大臣又は内閣総理大臣に対する申出(8条)
1 特定電子メールの送信の制限(3条)表示義務(4条)送信者情報を偽った送信の禁止(5条)違反の特定メールを受信した場合
A  受信者は、総務大臣又は内閣総理大臣に対し、適当な措置をとるべきことを申し出ることができる。
B  総務大臣又は内閣総理大臣は、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。

2 第6条の規定に違反して架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信がされたと認めるとき
A  電子メール通信役務を提供する者は、総務大臣に対し、適当な措置をとるべきことを申し出ることができる。
B  総務大臣は、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。


九 苦情等の処理(9条)
特定電子メールの送信者は、その特定電子メールの送信についての苦情、問合せ等については、誠意をもって、これを処理しなければならない。


十 電気通信役務の提供の拒否(11条)
電気通信事業者は、
1 送信者情報を偽った電子メールの送信がされた場合において自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生じ、又はその利用者における電子メールの送受信上の支障を生ずるおそれがあると認められるとき、

2 一時に多数の架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信がされた場合において自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生ずるおそれがあると認められるとき、

3 その他電子メールの送受信上の支障を防止するため電子メール通信役務の提供を拒むことについて正当な理由があると認められる場合
当該支障を防止するために必要な範囲内において、当該支障を生じさせるおそれのある電子メールの送信をする者に対し、電子メール通信役務の提供を拒むことができる。


十一 報告及び立入検査(28条)
1 総務大臣又は内閣総理大臣は、この法律の施行に必要な限度において、特定電子メール等の送信者若しくは送信委託者に対し、これらの送信に関し必要な報告をさせ、又はその職員に、これらの送信者若しくは送信委託者の事業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる(1項)。

2 総務大臣及び内閣総理大臣は、特定電子メール等送信適正化業務の適正な運営を確保するために必要な限度において、登録送信適正化機関に対し、特定電子メール等送信適正化業務若しくは資産の状況に関し必要な報告をさせ、又はその職員に、登録送信適正化機関の事務所に立ち入り、特定電子メール等送信適正化業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる(2項)。

3 身分証の携帯提示(3項)
立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示する。

4 立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない(4項)。


十二 送信者に関する情報の提供の求め(29条)
総務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、電気通信事業者その他の者であって、電子メールアドレス又URLを使用する権利を付与したものから、当該権利を付与された者の氏名又は名称、住所その他の当該権利を付与された者を特定するために必要な情報の提供を求めることができる。


十三 外国執行当局への情報提供(30条)
総務大臣は、この法律に相当する外国の法令を執行する外国の当局に対し、その職務の遂行に資すると認める情報の提供を行うことができる。


十四 権限の委任等(31条)
内閣総理大臣は、この法律の規定による権限(16条1項の登録、17条1項の登録の更新、25条の登録の取消を除く。)を消費者庁長官に委任する。
この法律に規定する総務大臣の権限及び前項の規定により消費者庁長官に委任された権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。

特定電子メール法〜その1

基本的には、同意していない人に広告宣伝メールなどの迷惑メールを送ってはいけないという法律。
受信した人は、違反を申し出ると、必要に応じて総理大臣又は総務大臣が措置命令を発するという仕組みになっているようです。

総務大臣の登録を受けた者が、特定電子メール等送信適正化業務を行うことが出来るとされ、現時点では、

財団法人日本データ通信協会http://www.dekyo.or.jp/soudan/
というところが、登録されているようです。

これは、総務大臣への申出を円滑に行うことができるようにするとともに、特定電子メール法の円滑な執行に資するための制度です。
ここに相談することで、申出に関する助言・指導をしてくれるようですが、逆に言うと、助言・指導を通じて、申出案件をフィルタリングする機能もありそうです。

上記協会の迷惑メール相談センターというところに相談するというルートが設けられているようです。


一 定義
1 電子メール(2条1号)
特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。以下同じ。)の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信(*1)であって、総務省令で定める通信方式(*2)を用いるもの

(*1)
(有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けること(電気通信事業法第2条第1号))
(*2)
A その全部又は一部においてシンプルメールトランスファープロトコルが用いられる通信方式
B 携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式

2 特定電子メール(2条2号)
電子メールの送信(*1)をする者(*2)が自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メール

(*1)
国内にある電気通信設備(電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備(電気通信事業法第2条第2号)に規定する電気通信設備からの送信又は国内にある電気通信設備への送信に限る。

(*2)
営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。以下「送信者」という。

3 電子メールアドレス(2条3号)
 電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号

4 架空電子メールアドレス(2条4号)
A 次のいずれにも該当する電子メールアドレス
 多数の電子メールアドレスを自動的に作成する機能を有するプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)を用いて作成したものであること。
B 現に電子メールアドレスとして利用する者がないものであること。

5 電子メール通信役務(2条5号)
電子メールに係る電気通信役務電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること(電気通信事業法第2条3号))


二 特定電子メールの送信の制限(3条)
送信者が、特定電子メールの送信をしても良い人
1 同意した人(3条1項1号)
あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨を送信者又は送信委託者(*)をいう。以下同じ。)に対し通知した者

(*)電子メールの送信を委託した者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。)

A 同意とは?
ア 受信者が広告・宣伝メールの送信が行われることを認識していること
POINT 特定電子メールが送信されることが認識されるような説明がなされているか。
× ごく小さい文字で説明
○ 営業上のメルマガのように広告・宣伝が掲載されていることが想定されているもの(メルマガが送信されることが表示されていればよい。)
POINT 送信者・送信受託者を受信者が明確に認識できるようにする。

イ 受信者が広告・宣伝メールの送信が行われることに賛成の意思を表示したこと

B 推奨
法人の合併等により送信者の名称が変更された場合に、その旨の通知
なりすまし防止のため、受信者に広告・宣伝を含まない確認メールの送信

C 同意の保存(施行規則4条)
 通知を受けた送信者又は送信委託者は、特定電子メールの送信をするように求めがあったこと又は送信をすることに同意があったことを証する記録を保存しなければならない。

D 保存の方法(必要に応じ提示することができる方法で)(施行規則4条1項)
a 通知をした者の個別の電子メールアドレス(特定電子メールの送信に当たってのあて先とするものに限る。)に係る当該通知を受けた時期及び方法その他の当該通知を受けた際の状況を示す記録
b 特定電子メールの送信に当たってのあて先とすることができる電子メールアドレスが特定できるようにされている記録及び次に掲げる場合の区分に応じた同意の通知に係る事項の記録
ア 書面(FAX含む)を提示し、又は交付することで通知を受けた場合
 当該書面に記載した定型的な事項
イ 特定電子メールの送信をすることで通知を受けた場合
 当該特定電子メールの通信文のうち定型的な事項
ウ イ以外に、インターネットを利用して通信文を伝達することで通知を受けた場合
 当該通信文のうち定型的な事項

E  保存期間(施行4条2項規則)
a  特定電子メールの送信をしない場合
 送信をしないこととした日までの間
b  送信をした場合 最後に送信(保存された記録にかかる特定電子メール。この項では、以下同じ。)をした日から起算して1か月を経過する日まで。
ただし、第7条の規定による命令を受けた場合は、
ア 法第七条の規定による命令を受けた日から起算して一年を経過する日までの期間に送信をした場合
 期間内に最後に送信した日から起算して1年を経過する日又は最後に送信をした日から1月を経過する日のいずれか遅い日
イ 最後に送信した日から起算して1か月を経過する日までの期間に法第七条の規定による命令を受けた場合
 最後に送信した日から起算して一年を経過する日

2 自己の電子メールアドレスを送信者又は送信委託者に対し通知した者(3条1項2号)
 自己の電子メールアドレス、送信者又は送信委託者は特定されていることが必要。
A 通知方法
 原則 書面(施行規則第2条第1項本文)
 例外 任意の方法
a 契約の申込みをした者又は契約を締結した者に対し当該契約の申込み、内容又は履行に関する事項を通知するために送信される電子メールにおいて広告又は宣伝が付随的に行われる場合
b 電子メールの受信をする者に対し広告又は宣伝が行われることを条件として提供される電子メール通信役務を用いて電子メールが送信される場合であって、その電子メールにおいて当該電子メール通信役務の提供をする者により広告又は宣伝が付随的に行われる場合(例えば、フリーメールなど)
c 広告又は宣伝以外の行為を主たる目的として送信される電子メール(電子メールの受信をする者の意思に反することなく送信されるものに限る。)において広告又は宣伝が付随的に行われる場合
d 特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨の通知の受領のために送信がされる一の特定電子メール

B 例外
 オプトアウトを行うための通知は、あたらない(施行規則2条2項)。

3 当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者(3条1項3号)

4 自己の電子メールアドレスを公表している団体又は営業を営む個人(3条1項4号)
A  公表の方法
自己の電子メールアドレスをインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置く方法(特定電子メールを送信しないように求める文言を置く場合は除く)(施行規則3条)。

よく、家にいると、スピーカーから「不要品を回収する」と宣伝して回っているトラックを見たり聞いたりしませんか。

 全ての業者とは限りませんが、中には、以下のような、悪質な業者もいるので注意が必要です。消費者庁から業務停止命令を受けた事例がいくつか紹介されていました。


悪質事例としては、

  • 回収金額を尋ねられても答えない。

不要品の回収を依頼すると、高額な金額を請求される。
それどころか、頼んでもいないものを、勝手に回収される(ドロボーです。これは。)。
断ると、玄関に足を挟んだり、家の前にしばらくトラックを止めていたりする。

  • 「払えないので荷物を元に戻して下さい。」というと、急に態度が変わる。

「ふざけんなよ。もう積んだんだよ。俺の手間はどうなるんだよ。労力はどうなるんだよ。降ろせるわけがないだろ。今日が駄目なら明日来るからそれまでに金おろしておいてよ。」
「俺は会社で働いているんだ。人を動かしてただじゃ済まないんだよ。」
などと脅かす。
キャンセル料を請求する。

  • 後日、返してくれと言うと、

「荷物はもう会社に降ろしたからないよ。とにかく払ってもらわないと駄目なんだよ。」
と拒否する。
「分割でも良い。」「半額にする。」などと譲歩したように見せかけ、相手にお金を支払わせようとする。

  • 最後に、領収証だけを交付する。
  • 暴力的言動は、威迫・困惑(特定商取引法第6条第3項)
  • 回収を断ったのに、さらに勧誘を行うことは、再勧誘(特定商取引法第3条の2第2項)
  • 頼んでもいないものを勝手に積み込んで回収費用を請求し、返還に応じないことは、迷惑勧誘(特定商取引法第7条第4号、同法施行規則第7条第1号)
  • 不用品回収の勧誘に先立って社名を告げないことは、名称等不明示(特定商取引法第3条)
  • 事業者の名称、代表者の氏名、役務提供契約の解除に関する事項等を記載した契約書を交付していないことは、契約書面の不備(特定商取引法第5条第1項及び同条第2項)

にそれぞれあたります。

相手は、「もう関わりたくない」という気持ちにつけ込んで、すこしでもお金を支払わせようとします。相手は、ほとんど原価がかかっていないうえに、品物を回収しており、わずかな金額でも十分に利益が出ており、さらなる勧誘行為を行います。

まずは、はじめに業者名・料金をしっかり聞く
怪しい書類には、署名や印をしない

このような悪質業者に対しては、お金を払う前に、直ちに消費者相談室(消費者庁)や警察に相談しましょう。
(警察があまり役に立たなかった事例も載っていましたが・・・)

平成22年07月22日白山ひめ神社御鎮座二千百年式年大祭奉賛会損害賠償請求事件

最一判平成22年07月22日

ひめ=比と口へんに羊
<事案>
白山市長の職が白山ひめ神社の鎮座2100年を記念する大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体(同大祭奉賛会)の発会式に出席して祝辞を述べたことが、憲法上の政教分離原則等に違反する行為であり、その出席に伴う運転職員の手当等に係る違法な公金の支出により市が損害を受けたとして、被上告人(住民)が、上告人に対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、その支出当時の市長に上記支出相当額の損害賠償の請求をすることを求める事案である。


<背景>
白山ひめ神社は、全国に多数存在する白山神社の総社であり、宗教法人である。
同神社は、古来から知られており、多数の初詣客が訪れることはもちろん、平素の参拝客も相当多い。
同神社が所在する白山周辺地域には、その観光資源の保護開発及び観光諸施設の整備を目的とする財団法人B協会が設けられている。


<原審>
憲法20条3項にいう「宗教的活動」とは、およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いを持つすべての行為を指すものではなく、そのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきである。」


最高裁流の目的効果基準を述べ、


そして、ある行為が「宗教的活動」に該当するかは、当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意義の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならない。


最高裁の規範を立てた上で、


本件神社は、宗教団体に当たることが明らかで、本件大祭は、同神社の宗教上の祭祀である。
本件奉賛会の目的事業(本件大祭の斎行等の奉賛)は宗教活動であり、本件奉賛会は宗教上の団体である。
本件発会式は、宗教活動である本件事業を遂行するために、その意思を確認し合い、団体の発足と活動の開始を宣明する目的で開催されたものである。
当時の白山市長の行為は、本件神社の宗教上の祭祀である本件大祭を奉賛し祝賀する趣旨を表明したものである。


などの事実認定をした上で、


「本件行為は、本件事業ひいては本件大祭を奉賛、賛助する意義・目的を有しており、かつ、特定の宗教団体である白山ひめ神社に対する援助、助長、促進になる効果を有するものであった。」
として、
「本件行為は、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり、地方公共団体の適法な事務に含まれると解する余地はなく、これに関する費用等につき公金を支出することは違法というべきである。」
としました。


さて、原審から、本判決至る間に、次のような判決がありました。

最大判平成22年1月20日民集64巻1号登載予定>
「国公有地が無償で宗教的施設の敷地としての用に供されているといっても、当該施設の性格や来歴、無償提供に至る経緯、利用の態様等には様々なものがあり得ることが容易に想定されるところである。例えば、一般的には宗教的施設としての性格を有する施設であっても、同時に歴史的、文化財的な建造物として保護の対象となるものであったり、観光資源、国際親善、地域の親睦の場などといった他の意義を有していたりすることも少なくなく、それらの文化的あるいは社会的な価値や意義に着目して当該施設が国公有地に設置されている場合もあり得よう。(略)これらの事情のいかんは、当該利用提供行為が、一般人の目から見て特定の宗教に対する援助等と評価されるか否かに影響するものと考えられるから、政教分離原則との関係を考えるに当たっても、重要な考慮要素とされるべきものといえよう。
 そうすると、国公有地が無償で宗教的施設の敷地としての用に供されている状態が、前記の見地から、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えて憲法89条に違反するか否かを判断するに当たっては、当該宗教的施設の性格、当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯、当該無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解するのが相当である。」



<判旨等>
本判決は、
本件大祭は宗教上の祭祀であり、「本件発会式は本件大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする奉賛会の発会に係る行事であるから、これに出席して祝辞を述べる行為が宗教とのかかわり合いを持つものであることは否定し難い。」

としたものの、

他方で、
地元にとって、本件神社は重要な観光資源としての側面を有していたものであり、本件大祭は観光上重要な行事であったというべきである。
奉賛会は、このような性質を有する行事としての本件大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体であり、その事業自体が観光振興的な意義を相応に有するものである。
本件発会式も、本件神社内ではなく、市内の一般の施設で行われ、その式次第は一般的な団体設立の式典等におけるものと変わらず、宗教的儀式を伴うものではなかった。
当時の白山市長は、地元の市長として、このような本件発会式に来賓して招かれ、出席して祝辞を述べたものである
祝辞の内容は、一般の儀礼的な祝辞の範囲を超えて宗教的な意味合いを有するものであったともうかがわれない。


としたうえで、


当時の市長が「本件発会式に出席して祝辞を述べた行為は、市長が地元の観光振興に尽力すべき立場にあり、本件発会式が上記のような観光振興的な意義を相応に有する事業の奉賛を目的とする団体の発会に係る行事であることも踏まえ、このような団体の主催する当該発会式に来賓として招かれたのに応じて、これに対する市長としての社会的儀礼を尽くす目的で行われたものであり、宗教的色彩を帯びない儀礼的行為の範囲にとどまる態様のものであって、特定の宗教に対する援助、助長、促進になるような効果を伴うものでもなかった」。


として、


「上記行為は、宗教とのかかわり合いの程度が、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとは認められず、憲法上の政教分離原則及びそれに基づく政教分離規定に違反するものではないと解するのが相当である。」


と結論づけました。


最高裁目的効果基準というのは、硬くも軟らかくもなるとされ、本件でも折しも原審と判断が分かれました。


ところで、本件では、「観光」という要素が再三登場していますが、現代において、祭りと観光というのは、切り離せないものになっています。有名な祭りというのは、伝統があり、伝統がある祭りは、何らかの宗教的目的に基づいています。反面、これらの祭りの集客力は、三大祭りを始め相当なものがあり、これが地域の観光を支えている側面も否定できません。

地方自治体が観光振興に尽力すべきというのも当然で、これらの祭りに一切関与できないというのも現実的ではなく、かといって、観光的側面を重視しすぎると祭りの有する宗教的側面(これが祭りの観光の目玉だったりする)に深く関わりを持ってしまうおそれもあります。祭りは、伝統的であるほど地域に文化として根付いていることもあり、線引きはかなり困難で、今後の判断の蓄積を待つしかないのかもしれません。

観光の目玉として祭りを盛り上げるのと、祭りを主催する宗教を助長するというのは、なかなか分離しづらいものがあります。

平成22年07月20日弁護士法違反被告事件

最一判平成22年07月20日


刑事事件は、対象にするつもりはなかったのですが、弁護士法違反ということで・・・


<事案>
不動産会社A:ビルと土地を買って、賃借人を立ち退かせたあと、解体、更地にして、自社が建物を建築するという建築条件付で土地を売却して利益を得ていた。

その一環として、A社は本件ビルを所有していたが、まだ賃借人74名いた。

不動産業を営む被告人B社、B社代表取締役被告人Cは、A社から本件ビルについて、立ち退き交渉して立ち退かせるように依頼された。

被告人らは、A社から、報酬と賃借人らに支払う立ち退き料等の経費をあわせた大金を一括して受領した。報酬と経費の割合の明示はなかった。

被告人らは、賃借人らに、B社がビルの所有者であると嘘を言い、賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら、約10か月、立ち退き料を払うから一定期日までに出て行くよう交渉して、合意をしたりした。


<判旨等>
被告人らは、立ち退き業務を、報酬と経費を割合を明示せず一括して受領し受託した。
本件は、法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかである。

弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」にあたる。
被告人らは、報酬を得る目的で、業として、法的紛議を解決するための法律事務の委託を受けて、賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら、これを取り扱ったのである。

結論:被告人らの行為につき弁護士法72条違反の罪の成立を認めた原判断は相当。


被告人側は、「A社と各賃借人との間においては、法律上の権利義務に争いや疑義が存するなどの事情はなく、被告人らが受託した業務は弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものではないから、同条違反の罪は成立しない。」と主張しましたが退けられています。


「法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件」というところがポイントでしょうか。
本件では、「賃借人が、賃貸借契約期間中で、現にそれぞれの業務を行っており、立ち退く意向を有していなかった。」ことから法的紛争が生ずることがほぼ不可避であるとされたようです。立ち退く意向を示していたとしても、立ち退き時期、立ち退き料等をめぐって法的紛議が生じることもあるとしているので、同様に判断される可能性はあるでしょう。


本件は、賃借人の賃貸借期間中、事業継続中の立ち退き交渉ということで、法的紛争にいたる可能性は、極めて高い類型であると判断されたのだと思いますが、
業として、交渉案件を代行する場合等も、各種条件を巡って法的紛議が生じることが不可避といえなくないので、さじ加減によっては、適用範囲が広がる可能性は秘めている気がします。



(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士法第72条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

平成22年07月20日請負代金請求事件

最三判平成22年07月20日


<事案>
被上告人から熱電供給システムの製造及び設置に係る工事を請け負った上告人が,被上告人に対し,請負代金3045万円及びこれに対する平成18年12月8日からの遅延損害金の支払を求めた事案である。


<事実関係等>
Aは,温泉施設「甲」の建設を計画し,同施設に本件システムを導入することを検討した。
Bは,Aから相談を受けて、上告人との本件工事の施工について交渉を始めた。
Aは,Bに対し,本件システムを発注した。
その当時,AとBは,本件システムについて,BがCに売却した上で,AがCとの間でリ
ース契約を締結することを予定していた。
上告人は,Bから,本件工事を請負代金2900万円で打診され,代金額については了承
したが,請負代金の支払を確保するために,信用のある会社を注文者として介在させることを求めた上,本件工事に着手した。
被上告人は,Bから依頼を受け、上告人との間で,請負代金を2900万円として,本件工事の請負契約を締結するとともに,本件システムをBに代金3070万円で売り渡す旨の売買契約を締結した。
本件請負契約の締結に当たり,被上告人が上告人に交付した注文書には,「支払いについて,ユーザー(A)がリース会社と契約完了し入金後払いといたします。手形は,リース会社からの廻し手形とします。」との記載があった。
上告人は,本件工事を完成させて,本件システムをAに引き渡した。
AとCとの間で,本件システムのリース契約が締結されないことになった。



<判旨等>
まず、原審は、
「本件請負契約は,AとCとの間で本件システムのリース契約が締結されることを停止条件とするものである」とし,「上記リース契約が締結されないことになった時点で無効であることが確定した」として、上告人の請求を棄却しました。
(無効になったあとは、どうするんですかね?ACに損害賠償でも請求するのでしょうか?本件スキームに巻き込まれた被上告人の立場や被上告人の取引に対する期待を考えると、被上告人にちょっと酷な気もします。)


これに対し、本判決は、
まず、AC間で予定されていたリース契約について、「いわゆるファイナンス・リース契約であって,Aに本件システムの代金支払につき金融の便宜を付与することを目的とするものであったことは明らかである。」

としたうえで、

「上記リース契約が成立せず,Aが金融の便宜を得ることができなくても,Aは,Bに対する代金支払義務を免れることはないというのが当事者の合理的意思に沿うものというべきである。」

と判示しました。

さらに,上告人が,本件工事の請負代金の支払確保のため,信用のある被上告人をあえて注文者として本件請負契約が締結されたことから、
「上記リース契約が締結されないことになった場合には,被上告人から請負代金が支払われることが当然予定されていたというべき」とし、「本件請負契約に基づき本件工事を完成させ,その引渡しを完了したにもかかわらず,この場合には,請負代金を受領できなくなることを上告人が了解していたとは,到底解し難い。」

としたうえで、

「本件請負契約は,AとCとの間で本件システムのリース契約が締結されることを停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で,本件請負契約に基づく請負代金の支払期限が到来すると解するのが相当である。」

と判示しました。


実質的に見れば、CがAにお金を融通してAの代わりにBに払い(BC売買)、Aが分割でCに返済し(ACリース)、Bは、Cから得た資金(手形)を被上告人を通じて支払(B上告人売買)、被上告人は、その支払を保証する(被上告人上告人請負契約)契約なんでしょう。


被上告人は、Cからの資金の到着を待って支払うという契約ですが、実質的には保証人的立場であるので、Cからの資金の到着がないということになれば、保証人としての義務を履行すべきというのが、本件スキームの実質から見ると妥当ということなのでしょう。
こういう技巧的スキームについては、実質を見て判断する必要があります。

平成22年07月16日贈与税決定処分等取消請求事件

最二判平成22年07月16日


<事案>
社団たる医療法人Aの増資に当たり被上告人らが出資を引き受けたことについて,被上告人らは著しく低い価額の対価で利益を受けたものであり,相続税法9条所定のみなし贈与に当たるとして,上告人が,被上告人らに対し,それぞれ贈与税の決定及び無申告加算税の賦課決定をしたところ,被上告人らは,上告人は上記出資の評価を誤ったものであり,みなし贈与に当たらないなどとして,本件各処分の取消しを求めている事案である。


<登場人物>
医療法人A会
医療法人A会を設立したB
Bの長女X2
X2の夫(Bの娘婿)X1
X1X2夫婦の子(Bの孫)X3X4


<事実>
○ A会定款
1 出資社員が退社時に受ける払戻し及び本件法人解散時の残余財産分配は,いずれも運用財産についてのみすることができる。
2 解散時の残余財産のうちの基本財産は国又は地方公共団体に帰属する。
3 これらの払戻し等に係る定款の定めの変更はできない。
なお、基本財産と運用財産の各範囲に係る定款の定めについては変更禁止の対象外(ポイント)

平成10年5月出資口数90口の増資
X1〜X4に割り当て
1口あたり5万円

増資当時のA会の財産
財産全体の評価約7億
基本財産 約24億
運用財産 約17億円の債務超過(赤字)

評価方式
類似業種比準方式(評価通達194−2)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/08/06.htm#a-194_2

上告人は、財産全体の評価を前提とし、類似業種比準方式により評価し、1口あたり約379万円と算定し、贈与税の決定及び無申告加算税の賦課決定をした。


<判旨等>
原審
上記運用財産から財産の分配や出資の払い戻しをする定款の規定を尊重し、評価の基準となる資産価値は運用財産を基準とすべきとし、本件のように基本財産と運用財産を区別しない業者を標本とする類似業種比準方式による評価を採用せず、出資1口あたりの評価額は5万円を上回るものではないとして、被上告人らの請求を認容しました。


本判決は、
出資社員は,法令で許容される範囲内において定款を変更することにより,財産全体につき自らの出資額の割合に応じて払戻し等を求め得る潜在的可能性を有する。
定款の定めのいかんによって,当該法人の有する財産全体の評価に変動が生じない。

としたうえで、

「持分の定めのある社団医療法人の出資は,定款の定めのいかんにかかわらず,基本的に上記のような可能性に相当する価値を有する」。

としました。


定款の定めについては、
定款の払戻し等に係る定めの変更禁止条項について、法令において定款の再度変更を禁止する定めがなく,この条項により,法的に当該変更が不可能になるものではない。
基本財産と運用財産の範囲に係る定めは変更禁止の対象とされていないから,運用財産の範囲が固定的であるともいえない。

として、

本件においては,本件増資時における定款の定めに基づく出資の権利内容がその後変動しないと客観的に認めるだけの事情はない。


と判断し、


A会の財産全体を基礎として類似業種比準方式により評価することには合理性があるとし、原判決を破棄しました。


なお、古田裁判官の補足意見では、定款変更の可能性から直ちに合理性を認めることはせず、本件のような法人においては、少数の持分権者が長期に保有して法人を支配することが多く、処分により価値の実現を図ることはまれであるから、法人の全資産に応じた保有価値によって持分を評価することが合理的であるとしています。

また、須藤裁判官の補足意見においては、当該社団医療法人の出資持分1口あたりの時価である客観的交換価値は、企業価値全体を出資持分の口数で除した金額であるとしています(定款そのものの変更権が剥奪されていない限り制約を取り除けることから、定款の制約により左右されないとしています。)。


任意で変更される余地がある限り、潜在的な価値は否定されないようです。
ちょっと手間をかければ、いつでも価値を元に戻せるということでしょうか。