下請法について

下請法について

Q 当社は,資本金500万円ですが,親事業者の資本金は2000万円です。
 下請法の対象となりますか?
A なり得ます。

 下請法の適用対象は,

 取引の内容に応じて,次のように分かれます(法1条,施行令1条)。
① 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託(の一部),役務提供委託(の一部)の場合
例えば,物品を製造・加工したり,物品を修理したり,プログラムなどの情報成果物を作成したり,物品を運送したり,倉庫に保管したり,情報処理をすることを委託された場合です。ただし,建設業者が請け負う建設工事は除かれます(この場合,建設業法が適用されますので,注意して下さい。)。
この場合,
鄯 親事業者が資本金3億円超(3億1円以上)の場合
  下請事業者は,資本金3億円以下
鄱 親事業者が資本金1千万超3億円以下の場合
  下請事業者は,資本金1千万円以下
となります。下請事業者には,個人事業主も含みます。

② ①の場合,すなわち,プログラム以外の情報成果物の作成,運送,物品の倉庫での保管,情報処理を除く,役務提供委託の場合
 例えば,映画や放送番組の制作,広告や製品取扱説明書,設計図面の作成やビルや機械のメンテナンス,コールセンター業務などの顧客代行などが委託された場合です。
この場合,
鄯 親事業者が資本金5千万円超(5千万1円以上)の場合
  下請事業者は,資本金5千円以下
鄱 親事業者が資本金1千万超5千万円以下の場合
  下請事業者は,資本金1千万円以下
となります。下請事業者には,個人事業主も含みます。

Q 下請法において,親事業者にはどのような義務が課されているのでしょうか?
Point.1 発注は,直ちに,書面を交付しましょう。
下請法においては,親事業者は、原則として,下請事業者に、直ちに、下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならなりません(3条,詳細な記載内容は,下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則参照)。
 違反すると,50万円以下の罰金が科されます(10条1号)。

Point.2 取引記録を書面で作成し、保存しましょう。
 下請法においては,親事業者は、下請事業者の給付、給付の受領や役務を提供する行為の実施、下請代金の支払その他の事項を記録した書類又は電磁的記録を作成し、これを保存しなければなりません(5条,詳細な記載内容は,下請代金支払遅延等防止法第五条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則参照)。
 違反すると,50万円以下の罰金が科されます(10条2号)。

Point.3 下請代金の支払期日を定めましょう。
 下請法においては,親事業者が下請事業者の給付を受領した日または委託を受けた役務の提供をした日から起算して、60日以内で、できる限り短い期間内に下請代金の支払期日を定められなければなりません(2条の2第1項)。
注  親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかは,問いませんので注意して下さい。
 
Q 下請代金の支払期日が定められなかったときや,60日を超えて支払期日を定められた場合は,支払期日はどうなるのでしょうか?
A 親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して60日を経過した日の前日が下請代金の支払期日となります(2条の2第2項)。

Point.4 支払期日までに下請代金が支払われない場合,遅延利息を支払う義務があります。
 親事業者は、下請代金の支払期日までに下請代金を支払わなかつたときは、下請事業者に対し、下請事業者の給付を受領した日または委託を受けた役務の提供をした日から60日を経過した日から遅延利息14.6%を支払わなければなりません(4条の2,下請代金支払遅延等防止法第四条の二の規定による遅延利息の率を定める規則)。

下請法上禁止されている行為について
1 受領拒否の禁止
 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むことは禁止されています(4条1項1号)。
 親事業者は,注文者が仕事をキャンセルしたからと言って,発注した物品の受領を拒否することはできません。発注物品と異なる物品や納期前の物品の給付は拒めます。
 
2 下請代金支払遅延の禁止
 下請代金を支払期日が過ぎても支払わないことは禁止されています(4条1項2号)。

3 下請代金の減額の禁止
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずることは禁止されています(4条1項3号)。
下請事業者との合意の有無は,問われませんので注意して下さい。
なお,勧告例は,この規定の違反が多くみられます。値引き,仕入割戻金,歩引,手数料,決算協力値引き,協賛金,販売対策協力金,販売奨励金,原価低減など,さまざまな名称が付されていますが,名称に拘わらず禁止されており,実質的に判断されますので,注意して下さい。

4 返品の禁止 
 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせることは禁止されています(4条1項4号)
 直ちに発見することができない瑕疵があった不良品については,受領後6か月以内であれば返品することができますが,瑕疵があるとされた場合,速やかに返品しない場合,6か月以内の返品であっても,不当な返品とされる場合があります。

5 買いたたきの禁止
 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対して,通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めることは禁止されています(4条1項5号)。
 買いたたきに当たるかは,①市価と比べて著しく低いかという価格水準と②不当に対価を定めていないかどうかという下請代金の額の決定方法等を勘案して判断されます。
 下請事業者と十分協議をしないで,一方的に下請代金を市価より著しく低い代金を据え置く場合などは,買いたたきに当たります。

Q 原材料が高騰しているのに,下請代金を上げてくれない場合も,買いたたきに当たるのでしょうか?
 原材料が高騰しているにも拘わらず,一方的に,下請代金を据え置く場合も実質的には通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金にあたるので,買いたたきに当たります。
なお,特定の下請業者を差別して,他の下請業者より低い下請代金を定める場合も,買いたたきに当たる場合があります。

6 物品の購入強制・役務の利用強制の禁止
 下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除いて、親事業者が,指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させることは禁止されています(4条1項6号)。
 
7 報復措置の禁止
 下請事業者が,公正取引委員会又は中小企業庁長官に,親事業者が下請法で禁止されていることを行っている事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすることは禁止されています(4条1項7号)。
 このような行為は,社会的信用を大きく低下させる危険があります。

8 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
 親事業者が,下請事業者に,給付に必要な原材料等を自己から購入させた場合、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の支払期日より早い時期に、下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせることは禁止されています(4条2項1号)。

9 割引困難な手形の交付の禁止
 下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することは禁止されています(4条2項2号)。
 手形期間が,繊維業では90日,その他の業種は120日を超える場合は,割引困難な手形とされます。

10 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
 親事業者が,自己のために,下請事業者に,金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることは禁止されています(4条2項3号)。
 協賛金,協力金等名目は問いません。下請事業者の従業員を派遣させることなども該当します。小売業者が,下請事業者の従業員に店舗の仕出し等営業を手伝わせるといった事例があります。

11 不当なやり直し等の禁止
 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させたり,下請事業者の給付を受領や役務の提供をした後に給付をやり直させることは禁止されています(4条2項4号)。
 役務の提供を委託を一方的に取り消した場合なども,これに該当します。
 給付内容を変更した場合は,変更内容を記載して保存しましょう。

Q 違反行為の疑いがあったらどうなるの?
A 調査,立入検査される場合があります。
親事業者若しくは下請事業者に対し,その取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入ったり、帳簿書類その他の物件を検査の実施があります(9条)。妨害行為には罰則があります(11条)。

Q 違反行為があったらどうなるの?
公正取引委員会による勧告措置があります(7条)。
違反事実の概要や勧告の概要が公表されます。
罰則がある場合があります(10条)