最三判平成22年07月06日自動車税減免申請却下処分取消等請求事件

最三判平成22年07月06日

<事案>
被上告人は,訴外Bから,被上告人名義で自動車ローンを組んで自動車を購入してBに貸与するよう要求・脅迫され,Bの指示どおり,自動車ローン契約を締結して自動車を購入し,Bに引き渡した。
自動車は,所有者を信販会社,使用者を被上告人,使用者の住所及び使用の本拠の位置を被上告人肩書地として,自動車登録ファイルに登録された。
被上告人は,県税事務所長に対し,被上告人は本件自動車を占有してなく,本件自動車の所在も不明であり,天災その他特別の事情がある場合(地方税法162条,愛知県県税条例72条)にあたるとして,平成17年度及び同18年度の本件自動車の自動車税の減免を申請した。
しかし,県税事務所長から,当該減免規定に該当しないとして上記申請を却下する旨の処分を受けたため,その取消しを求めている事案である。
なお,本件自動車は,平成19年2月21日,名古屋市内の路上に放置された状態で発見され,同年7月18日,廃車手続がされた。


愛知県自動車税基本通達は,「条例第72条に規定する減免の認定に当たっては,被害状況等を十分調査のうえ,広範囲にわたることのないよう留意するものであるが,具体的な取扱いは次によるものであること。」とした上,減免が可能な場合として,「天災により自動車の原動機等に被害を受けたため相当の期間において運行不能となったもの」,「盗難により相当の期間において自動車を所有できなかったと認められるもの」及び「その他特別の事情によるもので総務部税務課と協議し必要と認めたもの」の三つの場合を挙げている。


一審は,上告人が勝訴
原審は,被上告人が勝訴したのですが・・・


判例
条例72条の定める減免の要件としての「天災その他特別の事情」の要件は,納税者の意思に基づかないことが客観的に明らかな事由によって担税力を減少させる事情のみを指すと解するのが文理にも沿うとしたうえで,
「被上告人は,脅迫された結果であるとはいえ,Bに対し本件自動車を貸与することを承諾していたというのであるから,被上告人がその購入した本件自動車を利用し得ないという損害を被ったとしても,それが被上告人の意思に基づかないことが客観的に明らかな事由によって生じたものとはいえず,したがって,これを「天災その他特別の事情」に当たるということはできない。」


盗難は減免事由,恐喝,横領や詐欺なら減免事由に当たらないということになりそうです。
意思に基づかないという点からすると,強盗なら減免事由になりそうかな。
理屈はわかるんですけど,おそらく一般の人からすると盗難と恐喝,詐欺,横領で区別するというのは,庶民感覚とずれるんじゃないでしょうか?
脅し取られる方が盗難よりも防ぎようがないと考えるんじゃないでしょうかね。
民事に裁判員制度があれば,違う結論になりそうです。