最二判平成22年06月04日不当利得返還請求事件

最二判平成22年06月04日
<事案>
過払金請求訴訟において,上告人が更生手続開始の決定を受けるまでに発生した請求権につき更生債権の届出期間内にその届出をしていないから,平成14年改正前会社更生法241条本文により,その責めを免れると主張し(失権)たところ,被上告人は,そのような主張は,信義則に反し許されないと主張した事案ある。

判例
1 まず,上告人が更生手続で,過払金返還請求権につ更生債権の届出をしないと失権するなどの説明をしなかったことについて,
「上告人が,本件更生手続において,顧客に対し,過払金返還請求権につき更生債権の届出をしないと失権するなどの説明をしなかったからといって,そのことをもって,上告人による失権の主張が信義則に反するということはできない」。

2 新聞紙上に「ライフカードは,これまで通りお使いいただけます。」という見出しの社告を上告人名義で掲載したことについて,
「本件社告は,本件更生手続において,更生手続開始の申立てがされた後,更生手続開始の決定前にされたものであり,カード会員の脱会を防止して従前の営業を継続し,会社再建を阻害することなく進めることを目的として行われたものとみることができるのであって,その目的が不当であったとはいえない上,その内容も,顧客に対し更生債権の届出をしなくても失権することがないとの誤解を与えるようなものではなく,その届出を妨げるようなものであったと評価することもできない。」

3 上告人と同じくAをスポンサーとして進められたBの更生手続においては,更生手続開始の決定前に発生した同社の顧客の過払金返還請求権につき,更生債権としての届出を必要とせず,更生計画認可の決定による失権の効果は及ばないなどの取扱いがされたことについて,
「異なる事情の下で進められた上告人の更生手続において,これと同じ取扱いがされなければならないと解する根拠はなく,上告人による失権の主張が信義則に反することになるものでもない。」

ということで,
上告人の失権の主張は信義則に反しない。つまり,上告人が更生手続開始の決定を受けるまでに発生した請求権につき更生債権の届出期間内にその届出をしていないものについては,失権するとされました。